作品について4
作品に対する考え方や視野を広げるためにいろんな作品を見たり、
アートトークにはなるべく参加するようにしている。
生の情報はすごく勉強になる。
特にアートトークは今の美術界の情報を知ることができて、考え方が広がる。
母校が移転してしまうので、最後の制作展を見に久しぶりに大学に行ってみた。
校舎や制作室を見ていると、当時の記憶や制作が思い出される。
懐かしさとともに自分の原点を感じた。
ここからまた始めよう、美術作家として生きていけるように頑張ろうと決意を新たにした。
今までで一番心に残っている作品は、ドイツ滞在中に見た立体作品だ。
いつも作品を見ることに集中していたので、残念ながら作者名は覚えていない。
美術館の広い空間の中に等身大の100体近い人物像が渦巻きのように円状に展示されていた。
その立体を見て回るうちに、最初は無表情だった人物像が徐々に笑顔になっていく。
円の中心に辿り着く頃には、割れるばかりの大勢の笑い声が聞こえてくるかのような迫力に満ちた展示だった。
感動して心が震えた。これが芸術が持つ力かとその強さに驚いた。
フランシスベーコンの大規模な個展を海外で見て感じた時と同じくらいの衝撃があった。
視覚だけでなく、聴覚や触覚などの五感を通して全身で作品を体感する感覚というか。
しんと静まりかえる中で一人きりで見ているのに、作品の歓声に全身が包まれているような感覚だった。
その感覚を体感したくて、何度も美術館に通った。
特にドイツ滞在中に不安な時や落ち込んだ時とかは、作品を見て元気をもらっていた。
私は、形にできない五感や記憶を形にすることが芸術が持つ大きな力だと思っている。
良いなと思う作品は、その作者の追体験や表現したい感覚を鑑賞者に伝える力を持っている。
私も空間全体や作品を通して鑑賞者が追体験できる生命力の空間展示をしたいと強く思っている。
実現できるように、その展示機会を得ることができるようにこれからも頑張ろうと思う。