制作について5

油彩画制作に取り組み始めて感じることは、やっぱり一番自分に合った材料だなということだ。

他の素材よりも色彩や表現方法の自由度が高く、思い描くイメージに近づけやすい素材のように思う。

自分自身が素材に慣れている部分もあるが、油彩特有の乾燥が遅い部分と色重ねで深みができる部分が大きい。

微調整がしやすく、長い時間をかけてじっくりと取り組める素材だなと改めて感じる。

もちろん、水彩や立体という素材もそれぞれ良い部分はいっぱいあるし、制作していて面白い。

油彩制作はまた違った面白さというか、完成まで長期間先が見えない分、やっぱり描いてて楽しい。

無限に広がっていける自由さを制作中に感じるというか。

例えるならば、水彩や立体制作は短期滞在旅行で、油彩制作は長期滞在旅行という感じの違いがある。

私は下描きなしで画面上で思考しながら描くスタイルなので、制作には常に緊張感が漂う。

一人旅で目的地までの地図もなく、試行錯誤しながら見知らぬ町をさまよい歩く感じだ。

その緊張感を感じると、ようやく戻ってきたなと感じる。

制作においては一つ一つの選択が重大で、作品の方向性を決める大切な分かれ道にもなる。

一歩を踏み出す勇気もいるし、先が見えない中を歩き続けなければいけないという怖さもある。

その怖さを抜けると、新しい表現や自分が見たい世界が広がることも知っている。

何も制作しなければ、失敗もないし怖さもない。

リスクはないが、描く楽しさや喜びもない。

この怖さに逃げずに挑むことで、新しい表現は生まれる。

私にとって、一番のライバルは過去の自分自身だ。

常に過去の作品を乗り越えながら、新しい世界を見たいし、成長していきたい。

やっぱり、自分の作品は写真や画面越しよりも実物の作品が一番良いと思っている。

展示空間で実物の作品を多くの人たちに見てもらいたい。

ようやく実物の作品を見てもらえる機会ができたのだから、恐れず前に進もう。

鑑賞者が体感できるような、空間自体を変えることができるような作品ができるように頑張ろう。